博士課程前期のカリキュラムの3つのプリンシプル
基礎は基礎として
「数理計算理学概論」などの数理科学系の必修科目において,使える数学の知識を持った生命科学系の学生を育成します。例えばすべての生命科学系の学生は,「対数の概念があり」,「線形一次の微分方程式が組め」,「統計学がわかる」ことを目標にします。これは, 1)教える内容を厳選し,2)講義時間内に演習時間を設け,3)数理科学系の学生と生命科学系の学生との協調学習を行わせることによって実効性を挙げます。
その他の基盤的講義は,正・副の指導教員の指導の下でオーダーメードカリキュラムを組み,5年後の自分に必要な知識・スキルを身につけていきます。この講義選択の幅は,単位互換制度の導入により,両大学の各専攻のすべての講義まで拡張します。「科学英語」,「科学リテラシー概論」,特許論を含めた「MOT教育」は学生の将来のキャリアパスを鑑み,必修とします。
「数理科学」と「生命科学」のコンフリクトを見せる
概論・概説などのオムニバス講義においては,『HOME & AWAY 方式』のセッション講義を行います。例えば,明治大学の「理工学研究総合講義」では最初の数回を明治大学の数理科学の教員が講義し,次に広島大学の生命科学系の教員が講義します。さらに最終回の講義で,明治大学の数理科学の教員と広島大学の生命科学系の教員がともに登壇し,議論しつつ講義を進行することで,現時点の「数理生命科学」が抱えている「数理科学」と「生命科学」のコンフリクトを顕著化させます。
協調的学習手法によるコミュニティー形成
「数理・生命融合プロジェクト」を新設します。これは数理科学系の学生と生命科学系の学生とが協調し,高校生のための「数理生命科学」の教材を開発することによって,お互いに共感・連帯し,数理生命科学コミュニティーを形成することを目的としています。このプロジェクトは必修の「科学リテラシー概論」とリンクさせながら実施します。
博士課程後期のカリキュラムの3つのプリンシプル
国際性
「数理生命科学」の東アジアへの発信をめざして,韓国,中華民国,および中華人民共和国などの東アジアの拠点大学に積極的に学生を留学させるとともに,東アジアからの学生を積極的に受け入れます。これにより,5年後に本プログラムの実施校を中心として東アジア「数理生命科学」コンソーシアムを形成することを目標とします。
知的リーダーシップ
「数理生命科学ワークショップ」では,博士課程後期の学生がファシリテーターとなり,「数理生命科学」のトピックスなどを,年に1回程度,学部での講義においてワークショップ形式で講義します。助教制の導入に伴い,博士課程後期の学生たちは3年以内に教壇に立ち,知的リーダーシップを身に付けた若手研究・教育者として自立することが望まれます。そこで,このワークショップを通して,このような資質形成を支援するとともに「数理生命科学」の本質を見つめ直していきます。
自立・協調性
「数理生命科学」を志す学生が,将来において競争的資金を獲得し自立した研究者となるために,かつ,互いの研究観を尊重しつつ協調して研究を遂行するために,「提案型研究」を行います。また,この提案書作成に先立って,「グラント申請のための講習会」を開催し,競争的資金調達のスキルを学んでいきます。