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2020.10.26 10月29日(木)、小林直宏先生(理化学研究所 放射光科学研究センター)の招待講演「第24回RcMcD融合研究セミナー」を開催します。
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研究拠点について

 生命現象を分子レベルで理解することを目的とした分子生物学は、生命現象の理解を大きく進めた。 特に、遺伝情報をエンコードするDNAの細胞核内での遺伝情報発現制御は、分子生物学の中心課題として研究が進められた。 DNAは核内にどのように格納されており、どのようにして遺伝情報が読み出されるかについては多くの知見が集積されてきている。 現在では、DNAはヒストンタンパク質に巻き取られたヌクレオソームという構造を単位として、さらに高次のクロマチン構造の形で核内に収納されていることが明らかにされている。 また、遺伝子の読み出し(転写)に関わる多様なタンパク質が同定され、ヒストンに対する化学修飾を利用してヌクレオソーム構造を変化させることにより必要な遺伝子を読み出す機構が明らかになった。

 分子生物学は、ヌクレオソームレベルでの転写制御機構については分子レベルで明らかにしたが、高度に周密化した高次構造体であるクロマチンレベルでの遺伝情報制御についてはほとんど明らかにしていない。 近年の共焦点顕微鏡の性能の向上により、蛍光顕微鏡観察から、核内にあるクロマチンは、ダイナミックに揺動していることがわかってきた。 核内における遺伝情報制御にも、クロマチン構造自体が持つダイナミクス(動態)が密接に関係していることを示すデータが蓄積されてきている。 しかし、クロマチン構造の動態が、どのような機構により制御されているのかについてはほとんど明らかにされていない。 クロマヌクレオソームに対する化学修飾や、タンパク質結合という局所的な状態変化がクロマチン構造動態制御する機構を明らかにする数理科学的な仕組みを明らかにする必要がある。 私たちの研究拠点では、実験により観測されるクロマチン動態を数理科学的に解析することにより、クロマチン動態の物理学的な機構を明らかにする。 要素探索的な分子生物学研究からは明らかにすることができないクロマチン動態の物理学的な側面を明らかにすることにより、核内遺伝情報制御の分子生物学研究の新たな方向への展開に寄与することができると考える。

 本研究拠点における研究は、細胞生物学・分子生物学を主たる専門とする実験系の研究者と、計測データをもとに数理モデルの構築、 それに基づいた物理的機構の解析を進める数理科学系の研究者の緊密な連携により進める融合領域研究である。 広島大学理学研究科・数理分子生命理学専攻は、10年以上にわたり、数理科学・生命科学の融合領域における教育・研究を実践してきた。 本専攻で培ってきた融合領域研究における経験を生かして、クロマチン動態を対象とする新しい融合研究分野の構築と共に、この領域で活躍する融合領域研究者の人材育成を目的とする。