研究拠点形成の目的
近年、塩基配列を自由に選んで設計できる部位特異的ヌクレアーゼが開発され、このヌクレアーゼによって目的の遺伝子に様々なタイプの改変(欠失・挿入変異や遺伝子ノックイン)を加えることが可能となってきた。この技術は“ゲノム編集”と呼ばれ、これまで遺伝子の改変が困難だった生物においても利用可能な次世代のバイオテクノロジー技術として期待されている。本事業では、ゲノム編集研究に高い実績を有する人工ヌクレアーゼプロジェクト研究センターが中心となり、日本独自のゲノム編集ツールを開発し、生命現象解明の新規技術および再生医療や品種改良などの応用技術としてのゲノム編集技術を確立する。さらに、広島大学を中心とした「ゲノム編集コンソーシアム」からゲノム編集ツールや改変技術を提供することにより、日本の生命科学研究のレベルアップおよびバイオ産業の活性化を図る。
研究拠点活動の内容
- 国産のゲノム編集技術の開発:広島大学が開発した新規の人工ヌクレアーゼ(Platinum TALEN)の作製法をベースに高活性型の人工ヌクレアーゼを量産するシステムを開発し、培養細胞における遺伝子改変技術(一塩基置換や染色体編集)を確立する。
- ゲノム編集利用プラットフォームの確立:様々なモデル動物(ウニ、カエル、マウス)および培養細胞での自在な遺伝子改変を可能にするゲノム編集プラットフォームを確立する。
- 医歯薬学分野での展開研究:ゲノム編集技術を広く医歯薬学研究で利用するため、疾患モデル細胞や動物(マウスやラット、マーモセットなど)の作製を行う。加えて、造血幹細胞やiPS細胞でのゲノム編集を進め、再生医学へ直結する研究を展開する。
- 植物研究分野での展開研究:ゲノム編集技術を用いてノックアウト個体やノックイン個体などのゲノム改変植物を作製する。シロイヌナズナ、タバコ、トマト、ミヤコグサ、キクなどの双子葉草本、ポプラなどの双子葉樹木、イネ、ミナトカモジグサ、ローズグラスなどの単子葉草本など、産業的に有用なものを含め、幅広い植物種においてゲノム編集を行い、成功例を蓄積する。
- ゲノム編集の支援とデータ収集:ゲノム編集技術提供から得られるデータを収集・解析し、ゲノム編集の効率的な開発を進める。また日本のレベルアップを図るため,公開講座や研究会を積極的に開催する。
- ゲノム編集分野の人材育成:広島大学でのゲノム編集研究者の育成および国内外の研究者への技術指導を行う。この取組みが、研究者のみならず海外からの留学生を呼び込むことが期待される。